2016年11月23日水曜日

「フラ・バルトロメオ―神のルネサンス」展


The Pavilion and Museum Boijmans Van Beuningen, Rotterdam. Photo: studio Hans Wilschut.
フラ・バルトロメオはレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロと並び称される、盛期ルネサンスを牽引した画家である。堂々とした人物、繊細な色彩、衣服の襞の描写が巧みなことで知られている。展覧会では、絵画11点と素描約140点が展示されている。絵画作品は少ないものの、初期から後期の作品までが含まれている。

世界一のフラ・バルトロメオの素描の所蔵数を誇る美術館
展覧会を開催しているボイマンス・ファン・ベーニンヘン美術館は、フラ・バルトロメオの素描を世界で最も多く所蔵している。1729年にフィレンツェのコレクターがバルトロメオの素描500点を2冊の書籍に編纂したものを、1940年に美術館の創立者となるファン・ベーニンヘンが購入したからである。

素描から辿る画家の意図
16世紀の画家の作品でこれだけの素描が現存している画家はほかにはいない。例えば、フレスコ画《最後の審判》に関する素描は60点以上が確認されている。バルトロメオは同一人物を構図やポーズを決めるまで何度も描いている。彼は人物のポーズの研究用に、関節が曲がるマネキンをモデルに使用した。首の傾きや腕の上げ方、床についた膝の出し方などを数センチ刻みで動かすことで、ポーズから感じ取れる性格や感情の違いを表現し、また、それによって変化する身体を覆うローブの襞に注意を払って素描を繰り返し描いて、最適なポーズを決定していった。素描を制作順に見ていくと、画家がどこを注力しながら修正を加え、最終的に何を選択したのかが手に取るようにわかる。

会場では、素描と絵画作品のほかに、絵画作品をモノクロームに印刷した写真が素描のすぐそばに貼られている。モノクロームにされたおかげで、線描が強調され、より素描との共通点が探れるようになっている。

「フラ・バルトロメオ」展は2017年1月15日まで開催。
ボイマンス・ファン・ベーニンヘン美術館 Museum Boijmans Van Beuningen
Museumpark 18-20
3015 CX Rotterdam
the Netherlands
http://www.boijmans.nl/en/
開館時間:
火曜日~日曜日 11:00-17:00
12月5日、12月24日、12月31日 11:00-16:00

休館日:
毎週月曜日及び1月1日、4月27日、12月25日

2016年11月2日水曜日

「マグリット―イメージの裏切り」展

Fig. 1 René Magritte, La Décalcomanie, 1966, Huile sur toile, 81 × 100 cm, Dr Noémi Perelman Mattis et Dr Daniel C. Mattis, © Adagp, Paris 2016, © Photothèque R. Magritte / Banque d’Images, Adagp, Paris, 2016

今年、40周年を迎えたパリのポンピドゥー・センターでは、9月27日から「マグリット―イメージの裏切り」展が始まった。ベルギーの画家ルネ・マグリットはシュールレアリスムの画家として知られ、想像力を駆使して、一見無関係と思える日常的なイメージを組み合わせ、夢と現実が矛盾することなくひとつの世界を形作るような「超現実」を実現しようとした(fig.1)。マグリットはミシェル・フーコーなどの哲学者とも交流をしており、その影響も強く認められる。

Fig.2 René Magritte, La Trahison des images (Ceci n’est pas une pipe),
1929, Huile sur toile, 60,33 x 81,12 x 2,54 cm, Los Angeles County Museum
of Art. Purchased with funds provided by the Mr. and Mrs. William Preston
Harrison Collection, © Adagp, Paris 2016, © Photothèque R. Magritte
/ Banque d’Images, Adagp, Paris, 2016
マグリットの絵画言語
本展では、思想と芸術という観点からのマグリット作品の解読を提案している。マグリットは繰り返し使用したいくつかの特徴的なモティーフ―カーテン、文字、額や区切られた空間、影-はそれぞれの意味を持ち、哲学者が理路整然と論を展開するようにマグリットは絵画の中でこれらの絵画言語を使用して語った。例えば、額や区切られた空間はプラトンの「洞窟の比喩」であり、影は大プリニウスが『博物誌』に記した絵画の発明のことだと捉えられる。

「これはパイプではない」
《イメージの裏切り(これはパイプではない)》(fig.2)はパイプの絵の下に「これはパイプでない」という文字が書かれている。絵と文字が矛盾しているように思えるが、しかし、いくら本物と見間違えるほどのパイプであってもやはり絵なのである。文字とイメージの対立は偶像を崇拝するイスラエルの民に激怒したモーセが十戒の石板を破壊する聖書の時代にさかのぼる長い歴史を持っている。

「マグリット―イメージの裏切り」展は2017年1月23日まで開催。(火曜日休館)


ポンピドゥー・センター  Centre Pompidou
19 Rue Beaubourg
75004 Paris
France
http://www.centrepompidou.fr/en
開館時間:
11:00-23:00  休館日 火曜